論文

2020年8月29日 (土)

p75というタンパク質の研究①

こんにちは。

トヨエモンです。

 

さて、タイトルにしたp75というタンパク質・・・

実は米国Vanderbilt大学のFang Yan教授(ヤン先生)が

Lactobacillus rhamnosus GG(※1)から見つけたタンパク質の一つです。

もう一つのタンパク質p40と共に、2007年に報告されました(※2)。

※1 2020年4月に学名がLacticaseibacillus rhamnosus GGに変更されています。

※2 Yan et al. (2007) Gastroenterology 132:562-75.

  

上述の論文では、p40もp75もAktシグナル(細胞内の情報伝達機構の一つ)

を活性化して、腸管上皮の恒常性維持に寄与することが報告されています。

ただ、p40の方がその生理活性が高いという理由で、

ヤン先生はその後p40を中心に研究を進めていきます。

  

因みにp40とp75という名前は、

SDS-PAGE(電気泳動法)でこれらのタンパク質を解析(分離)すると、

分子量40と75だったということから、p(protein:タンパク質の略)を頭に付けて、

それぞれp40とp75になっています。

  

それで、p75の研究はというと、こちらのタンパク質については、

ベルギーのLebeer先生の研究グループを中心に報告されていきます。

また、その際に「p40とp75がL. rhamnosus GGから多量に分泌される

タンパク質」ということから、『Major secreted protein: MSP』と

呼び名が変えられています。

そのため、これらのタンパク質を扱った文献は、

両方の名前が使われていたりするので、少々ややこしいです。

  

また、その時に順番がMsp1=p75、Msp2=p40となりました。

トヨエモンはヤン先生とのお付き合いが長いせいか、

順番がp40 → p75(1 → 2)というイメージなので、

どうしてもこの順番に慣れません・・・。

ただ、「p」だけでは味気無いのも事実で、

「Msp」の方が少し格好良いかな・・・とも思っています。

  

さすがに長くなってしまったので、

このLebeer先生たちのp75/Msp1に関する論文は

次回紹介したいと思います。

 

 

つづく。

2020年8月25日 (火)

Lactobacillus属の乳酸菌が再分類されました・・・

こんにちは。

トヨエモンです。

  

実は今年の春(2020年4月)に

Lactobacillus属に属している乳酸菌の多くで、

その正式名称(学名)が変わりました。

  

Lactobacillus rhamnosusLacticaseibacillus rhamnosus

となりました・・・。

因みにLactobacillus gasseriのように変わらない菌種もあります。

  

詳しく知りたい方は、

腸内細菌学会のWebサイト(https://bifidus-fund.jp)に

用語集というコーナーがありまして、

そこに『Lactobacillus属の再分類』として掲載されている情報が

解かりやすいかもしれません。

 

大元の情報は、

Zheng et al. Int J Syst Evol Microbiol (2020) 70: 2782–2858.

となります。

 

学術的には非常に重要なことではありますが、

PubMed(文献データベース)で検索ワードを

「“lacticaseibacillus” “GG”」にしてみたところ・・・3件。

今までと同様に、検索ワード「“lactobacillus” “GG”」だと1,504件。

これではPubMedのヒット数ネタが書けません・・・。

どうしたら良いのでしょうか???

  

  

おしまい。

 

2020年7月27日 (月)

前回偉そうに書きましたが…

こんにちは。

トヨエモンです。

 

前回、腸管の細胞が産生するPRAP1というタンパク質をさらっと紹介しましたが、

その続編(?)です。

 

さて、このPRAP1、本名はProline rich acidic protein-1。

プロリン(アミノ酸の一種)が豊富で、酸性のタンパク質ということですね。

分子サイズは約17kDa、約150個のアミノ酸から出来ています。

  

そして面白いのが、

“天然変性タンパク質(intrinsically disordered protein)”であること。

 

  

偉そうに紹介していますが、 

トヨエモン、実は天然変性タンパク質のこと…

全く知りませんでした!(苦笑)

 

なので、最初、intrinsically disordered proteinを見たときに訳すことができず、

“もともと調子が悪いタンパク質”と訳し、「???」と行き詰まりました。

 

  

ちなみにWikipediaでは、

『固定された、もしくは整った(「オーダーした」)三次元構造を

持たないタンパク質である』と書かれています。

  

通常、タンパク質はアミノ酸配列や分子間の結合などによって、

三次元(3D)構造をとっています。

そして、タンパク質が機能するには3D構造が重要で、

例えば、卵の白身は過熱すると変性し(3D構造が壊れ)、

真っ白に固まり、もはや生卵の白身とは別物になってしまいます。

  

 

一方で、天然変性タンパク質は、決まった3D構造をとっていない、

もしくは部分的にしか3D構造をとっていないので、

ただのアミノ酸が並んだ鎖がフラフラしている感じなります。

それでも機能を持っているということみたいです。

 

 

なんだか、このフラフラしている感じが自由でいいですね!

トヨエモンも自由に生きたい!!

なんて考えていたら、

もはやPRAP1自体はどうでもよくなって、

天然変性タンパク質について、もっと知りたくなりました(笑)

知りたい欲求があるうちは、未だ研究者としていられるのかな…???

 

  

おしまい。

2020年7月22日 (水)

腸管の細胞が産生するPRAP1

こんにちは。

トヨエモンです。

 

そういえば、ついにGO TOキャンペーンが始まりましたね。

ちなみにTO GOだったら「テイクアウト」という意味ですね。

自粛期間中はどこもかしこもテイクアウトだったので、

いつの間にか、自主的に「TO GOキャンペーン」をやっていたのかも知れません(笑)

どうでもいい話ですみません・・・。

 

さて、今回はLactobacillus rhamnosus GGと腸管の細胞について、

さらっと書いてみたいと思います。

と言うのも、“腸管の細胞が産生するPRAP1というタンパク質が、

酸化ストレスなどから腸管上皮を保護している”というような内容の論文(※)を

見つけたからです。

 ※ Wolfarth et al. Cell Mol Gastroenterol Hepatol (2020)

 

どうやら、このPRAP1というタンパク質は、

マウスにL. rhamnosus GGを投与して、

その腸管上皮細胞の遺伝子発現を調べた際に見つかったものらしく、

ちょっと気になった次第です。

また、PRAP1以外の細胞保護因子の遺伝子発現も上がるようで、

腸内細菌やプロバイオティクスが腸管上皮細胞に作用することの重要性が伺えます。

   

ちなみに弊社が共同研究をしている米国Vanderbilt大学のFang Yan教授は、

L. rhamnosus GGが作るタンパク質p40とp75が腸管上皮細胞に作用して、

恒常性維持に関与していることを発見した先生です。

  

このように、色々なことが明らかになってくるにつれ、

プロバイオティクスは単一のメカニズムではなく、

様々な経路を通して、健康に寄与していることが分かります。

  

つづく。

2020年6月19日 (金)

乳児疝痛(コリック)

こんにちは。

トヨエモンです。

 

過去、このブログでは、世界最大級の医学文献データベース『PubMed』で

LGGの論文を検索したときのヒット数をチョイチョイ報告していました。

ちなみに今日(2020年6月19日)のヒット数は1,400件以上、

2020年だけでも既に64報が報告されています。

つまり、LGGに関連する研究は世界中で今も着々と進んでいるのです。

 

で、最近発表された論文をざっと確認していたら、

乳児疝痛(にゅうじせんつう、コリック)に関する論文がありました。

 

健康な赤ちゃんが原因不明で泣きぐずることを、

日本では『黄昏泣き』とか『夕暮れ泣き』と呼ぶそうです。

(トヨエモンは初めて知りましたw)

昔は何故泣いているのか解らず、生後数か月でおさまるので、

仕方がないと思われていたようですが、

海外では赤ちゃんの胃腸の痛みや不快感が原因の一つだと考えられていて、

infantile colic(コリック)と呼ばれ、早くから研究が進んでいたらしいです。

 

そして、胃腸の不調と言えば、やはりプロバイオティクス。

実は2015年にフィンランドのツルク大学の研究チーム

(このブログでも名前が出てくるSeppo Salminen先生や

Erika Isolauri先生のチーム)が、

LGGと乳児疝痛の研究について報告しています(※1)。

 

ただ、この報告では、

LGG投与群とプラセボ群(LGG無し)を比較したときに、

赤ちゃんの泣きぐずりの時間に変化はみられませんでした。

しかし、その親御さんたちにとっては、

LGG群の方が“有意に泣きぐずりが少ない”と感じていたことが分かり、

LGGの効果が期待されました。

 

そして、今回のイタリアのチームが発表した論文(※2)では、

LGG投与群で泣きぐずりの時間が有意に短くなったことが報告されました。

 

今後、このようなエビデンスが蓄積されていけば、

LGGの乳児疝痛に対する効果が確固たるものになっていくのでしょう。

そして、赤ちゃんとその御両親が少しでもハッピーになれるのであれば、

LGGの研究をしている拙者らも嬉しい限りです。

さらなる研究の進展が楽しみですね。

  

おしまい。

 

 

※1 Partty et al. Pediatr Res (2015) 78:470-5.

※2 Savino et al. Nutrients (2020) 12:E1693.

2020年4月18日 (土)

なんで気付かなかったのか・・・

こんにちは。

トヨエモンです。

 

先日地方の新型コロナ感染について書いたと思ったら

やはり全国に緊急事態宣言が出ましたね。

 

3月の連休から2週間後に感染者数が一気に跳ね上がったので、

そのデータをもとに、今回の宣言を出したとのことです。

確かに厚生労働省のHPを見ると、3月の連休あとから急に増えだして、

4月7日辺りから、ワーっとなっています。

そりゃ、GWに外出しないで、ってなりますね。

 

さて、トヨエモンは大切なことを忘れていました。

そう、LGGと肺炎の論文を検索していないんです・・・。

こんなにブログのネタとして最適なはずなのに。

ホント、アホなんじゃないかと自分で思ってきましたsweat02

 

で、早速PubMedで

“lactobacillus” “GG” “pneumonia”をキーワードに検索してみます。

 

すると、10件ヒット!

01_2

 

その中で、LGG以外のプロバイオティクスを一緒に使っているものを除くと、

下の表のように8件になりました。

 02  

 

当然、コロナに対する研究なんて無いのは分かっていたけど、

人工呼吸器関連肺炎(VAP)とかに対する研究があるんだと思うと、

改めてLGG乳酸菌の懐の深さに気付かされましたhappy02

 

因みに1の論文に関連してですが、

LGG乳酸菌と呼吸器感染の研究については

「おしえて!LGG乳酸菌」(旧LGGラボ)にも掲載されています。

リンク先:https://lgglab.jp/index.html

ご参考までに。

 

おしまい。

2020年4月15日 (水)

補足:LGGとウイルス感染について調べてみた!

こんにちは。

トヨエモンです。

 

緊急事態宣言が発令されて早一週間。

一昨日は600人前後、昨日は新規感染者数が300人前後と

この2日間は少し下がってきていますが、このあとはどうなるのでしょうか?

 

そういえば、東京都が外出自粛要請を出した週末は、

茅ヶ崎には人がいっぱいでしたねw

ウチの前の通りには、駅から海方面に向かう人たちが

ひっきりなしに歩いていました。

どうみても地元の人ではない。。。

まあ、茅ヶ崎なんて都内へ通勤している人もたくさんいるし、

それなりに人口もいるのでリスキーですが。。。

 

ただ、こういった状況を見ていると、

首都圏からどんどん拡散していく状況をひしひしと感じるわけで、

今後はさらに地方での感染・死亡報告が増えていくんだろうと思います。

(もう増えているような・・・)

あと、緊急事態宣言が1週間早く出てれば・・・

 

と、前置きが長くなってしまいましたが、

前回の「LGGとウイルス感染について調べてみた!」を出したら、

Jさん(なぜかこのブログによく出てくる他社の人w)から

「保育園や幼稚園でダブルブラインドのヒト試験をやればロタウイルスへの

効果がわかるのかな」

というコメントをいただきました。

 

実は、ロタウイルス感染はLGGの十八番で、

古くから多数の臨床試験がされており、

メタ解析もされています(しかも度々更新されている)。

そういったエビデンスの蓄積があるので、

EUでは小児の急性胃腸炎の治療ガイドラインに

LGGと経口補水の併用が推奨されているくらいです。

 

実際、PubMedで”lactobacillus” “GG” “rotavirus”で検索すると

動物試験なども含まれますが、59件ヒットします。

 

Pubmed_rota

  

前回は、絞り込むために検索ワードを

”lactobacillus" "GG" "virus" "infection”

とinfectionをつけたので、

ロタウイルスに関するヒト試験等はヒットしなかったのです。

 

というか、ロタウイルスがいっぱいヒットしちゃうと思って、

あえて避けるために絞り込んだら、

ヒットして欲しかったHatakkaやHojsakの論文も

引っかからなかったんです。

世の中、そう上手くはいかんです・・・。

 

  

おしまい。

2020年3月16日 (月)

LGGとウイルス感染について調べてみた!

こんにちは。

トヨエモンです。

 

新型コロナウイルスの猛威は止まりません。

すでに15の国と地域で、非常事態宣言 or 緊急事態宣言が出されております。

先日の阿部安倍首相の話では日本は未だそこまでいっていないとのこと。

ただ、今後どうなることやら・・・。

 

こんな状況のなか、プロバイオティクスの免疫調節作用が

また脚光を浴びてるらしいです。

そこで、トヨエモンは論文検索サイトPubMedを使って、

LGGとウイルス感染について調べてみましたw

  

まず、Lactobacillus GGとウイルスで調べてみます。

(検索ワードは"lactobacillus" "GG" "virus")


Pubmed01_2

   

34件引っかかりました。

ちょっとチェックするのが億劫ですw

 

なので感染も検索ワードに加えます。

(検索ワードは"lactobacillus" "GG" "virus" "infection")

 

Pubmed02

 

  

すると18件に絞られました。

これらの要旨をチェックすると、内訳はこんな感じになりました。

 

Hyou03

 

LGGといえば、やはりロタウイルス感染が有名なので、

それなりに引っかかります。

 

もっと面白かったのが、呼吸器感染の論文が計8報も引っかかったこと!

勿論、新型コロナウイルスは出てきませんw

でも、インフルエンザと風邪(ライノウイルス、ピコナウイルス)などの

名前が出てきました。

ただ、要旨を読む限り「数値的はLGGを摂取したグループの方が良いけど、

統計的な有意差まで出ていない」や、「効果を確認するには更なる試験が必要」など、

慎重な結論を出しています。

まだまだエビデンスの蓄積が必要なようです。

 

ちなみに、今回の検索結果には、

以前紹介したフィンランドやクロアチアで行われた

LGGの呼吸器感染症の予防効果に関する論文は含まれませんでした。

ロタウイルスに関しても、もっと論文がたくさんあるのですが、

なぜか動物試験の論文が多かったです。

なので、検索ワード次第ではもっと面白い論文があるのかも!?

 

おしまい。

 

2019年10月22日 (火)

LGGは旅行者の下痢を予防するのか!?

こんにちは。

トヨエモンです。

 

前回の記事でちょっと触れましたけど、

少し前にインドネシアのバリ島に行ってきました!

インドや東南アジアの国々へ行くときに気になるのがお腹の調子・・・

日本人は結構お腹を壊して下痢をする人も多いかと。

 

そこで、このブログで多分紹介していると思いますが、

もともとLGGには旅行者の下痢を予防するという論文(※)があるので、

今回の旅でプチ検証です(笑)

※『Prevention of traveller's diarrhoea by Lactobacillus GG』

Okesanen et al. 1990 Ann Med

 

とりあえず、今回は整腸剤や下痢止めを持って行かずに、

現地でもずっとLGG菌を摂取してやりましたscissors

 

 

そしたら、そのおかげかメッチャ調子良かったです♪

一緒に行った友達は腹を壊していましたが、

トヨエモンは快調快腸!

逆に食べ過ぎて毎日モリモリでした(笑)

 

Img_4801

ただ、もういい歳なので、大体はキレイめなワルンやレストランで

食事をしたのもあるかも知れません。

あと生野菜は普通に食べましたが、氷はやめてますしね。

 

Img_4809

まあ、実際LGGがどの程度寄与したかは定かではないものの、

トイレに対する心配がなかったので、良い波に乗って、

ビールをたくさん飲んで、短い時間でしたが満喫できました!

 

 

ということで、

今回は「LGGは旅行者の下痢を予防するか検証してみた!」の巻でした!?

ちなみに下痢になったら悲惨なので、下痢止めは持っていきましょう!!

  

おしまい。

2018年8月 1日 (水)

たまにはGGの論文の話・・・

こんにちは。

トヨエモンです。

 

今日で8月に入りました。

とにかく暑いです・・・暑い、暑い、暑い!

それしか言葉が出てこないくらい暑いんです!!

熱中症リスクが相当高いみたいなので、皆様、

水分と塩分のバランスには気をつけてください!、と

当たり前のことしか言えません・・・

 

さて、久しぶりに文献データベースPubMedで

"Lactobacillus" "GG"をワードに検索してみると、

1163件ヒットしましたsign01

相変わらずのヒット数ですね。

 

その中でいくつか気になったのがありますが、

今日はその一つについて・・・

 

 

その論文が、Spacovaらの

『Intranasal administration of probiotic Lactobacillus rhamnosus GG

prevents birch pollen-induced allergic asthma in a murine model.』

  

 

過去に、喘息に対するプロバイオティクスの良い効果ってみたことがないのですが、

(トヨエモンの勉強した範囲では・・・)

この論文、ちょっと気になりました。

 

ただ、Lactobacillus GGの

樺の木の誘発するアレルギー性の喘息に対する効果の論文なので、

かなり限定的です。

しかも、動物試験の結果ということに加えて、論文の要旨には

この文献は著作権に保護されていると。

要するに結果がすぐには見られない・・・

 

少し前に開催された日本アレルギー学会の際に、

近くのブースで出展されていた方とも話したのですが、

なかなか喘息に対するプロバイオティクスの効果ってないんです!!

 

トヨエモンも喘息持ちなんで、結構このあたり気になるんで、

学会では盛り上がって話ができるんですけど、普段の生活では

あまりピックアップされないんですよね・・・

 

おしまい。