論文

2020年10月30日 (金)

ピリ(線毛)が強くなる!?

こんにちは。

トヨエモンです。

 

Lactobacilus (※1) rhamnosus GGに関連する新しい文献を探したところ、

L. rhamnosus GGの突然変異株(派生株)から、

ピリ(線毛)の力が強い株をピックアップしたという論文(※2)を見つけました。

(※1)現属名:Lacticaseibacillus

(※2)Rasinkangas et al. Front Bioeng Biotechnol (2020) 8:1024.

  

ちなみに『ピリ』とはこのブログでも何度も紹介してきたように、

菌体から毛のように伸びている幾つかのタンパク質(SpaA、SpaB、SpaC)のことで、

L. rhamnosus GGが腸管粘膜へ付着する力に関係しています。

  

その中でもSpaCは付着力に最も重要だと考えられており、

この論文ではSpaCの抗体を用いて、

SpaCがリッチそうなL. rhamnosus GGの派生株を選んできたようです。

  

付着力の強い派生株は、大まかに分けると下記の3つのグループに分けられ、

1)SpaCの遺伝子に僅かな変異があるもの

2)解らない

3)SpaAの遺伝子に僅かな変異があるもの

だったと報告されています。

ちなみに、僅かな変異とは、DNAを構成する塩基がたった1個だけ変わっただけです。

  

1)と3)は遺伝子の変化なので、付着性が強くなったことも理解しやすいですね。

ただ、2)については論文の著者らも驚きだったようです。

ピリの付着力は、ピリ自身の遺伝子以外の要因にも影響されていて、

それがピリの産生や構造に影響を与えているのではないか、

と著者らは考察しています。

  

本当に生物の体は複雑です(汗)。

 

 

つづくかも・・・。

2020年10月28日 (水)

尋常ではないスピード・・・

こんにちは。

トヨエモンです。

 

早いもので10月ももうすぐ終わりです。

だいぶ朝晩の気温も下がり、寒くなってきました。

Img_5459

近所の海も冬の様相を帯びてきました。

 

 

さて、タイトルに出てきました「尋常ではないスピード」・・・。

これはLactobacillus (※) rhamnosus GGに関する論文が

文献データベースPubMedに掲載されるスピードのことです。

※現属名:Lacticaseibacillus

 

 

10月26日現在でキーワードを

「”lactobacillus” OR “lacticaseibacillus” AND “GG”」

で指定して検索すると、なんと1536件もヒットします。

2週間前に同様のキーワードで検索した際には1521件だったので、

ほぼ1件/日のペースで更新されていることになります。

  

もちろん、キーワードでの検索という性格上、

なかには全く関係ない論文もヒットしてきます。

それでも、ほとんどは関連する文献なわけで、

トヨエモンらが全てを把握することなど到底無理な話です。

  

通常、ヒットしてきた論文の中に気になったものがあると、

それを取り寄せて読みます。

ただ、内容が余程自分の専門と重ならない限りは、その論文を理解するために、

さらに他の資料や論文を何報も取り寄せ読むことになるわけです。

という大変な作業なのに、毎日1件増え続けるなんて・・・。

  

さすが、世界で最も研究されている乳酸菌!!

 

  

おしまい。

2020年9月30日 (水)

p75というタンパク質の研究③

こんにちは。

トヨエモンです。

 

さて、前回はp75(=Msp1)が細胞壁分解酵素であろうという観点から、

Lebeer先生のグループが研究を実施したということを書きました。

因みにこの研究報告の第一著者はClaesさんという方なので、

以下「Claesら」と書きます(※)。

また、p75についても、彼らの報告した通りにMsp1と記述することにします。

それでは、実際にどのような研究をしたのでしょうか?

※Claes et al. PLoS One. (2012) 7:e31588.

 

まず、Claesらは、正常なMsp1を産生することができない

L. rhamnosus GG株を作りました。これをノックアウト株と言います。

通常のL. rhamnosus GGを培養して顕微鏡で見ると、

1.5~2μm程度の大きさの菌が、

数個から数十個がつながっていることが観察できます。

論文の写真を引用できないので、トヨエモンが撮影した写真を載せます。

何となく鎖のように繋がっていることが分るでしょうか?

 

01

ただ、1個1個の菌の形が棒状というか、

円筒状であることははっきり分かるかと思います。

 

 

一方で、ノックアウト株を培養すると、

1個1個の菌の形状がはっきりせず、

なんと普通の5~10倍の長さをもつL. rhamnosus GGになってしまうというのです。

こちらも画像が引用できないので、イラストで説明します。

(本当は写真で見ていただきたいのですが・・・)

 

02 

 

細菌は分裂して増えていくわけですが、

ノックアウト株はうまく分裂できていないために、

このような現象になると考えられます。

そして、分裂する際に重要なのが細胞壁分解酵素とよばれる、

自身の形を作っている細胞壁(殻のようなもの)を壊す酵素なのですが、

ノックアウト株はMsp1が働かないために細胞壁がうまく壊れず、

このように長く伸びてしまっていると考えられるのです。

  

Claesらは、この論文で実際にMsp1が

L. rhamnosus GGの細胞壁を分解することも解明しており、

Msp1の本来の役割は「細胞壁分解酵素」であることを明らかにしています。

  

もともとは腸管上皮に作用するタンパク質として発見されたp75ですが、

本来の役割は自分自身の細胞壁を分解する酵素だったのですね。

実は、本来の役割のほかにも機能するタンパク質は、

ムーンライティングタンパク質と呼ばれ、

乳酸菌にも様々なムーンライティングタンパク質が発見されています。

  

だいぶ長くなってしまったので、

そのうちムーンライティングタンパク質についても書きたいと思います。

 

 

おしまい。

2020年9月28日 (月)

p75というタンパク質の研究②

こんにちは。

トヨエモンです。

 

最近、めっきり涼しくなりました。

もうすぐ9月も終わりです。

そして、前回の更新からもう1ヵ月も経ってしまいました・・・。

  

ということで、

今回もL. rhamnosus GGが作り出すp75というタンパク質についてです。

(※前回を読んでいない方はさっぱり解らないかも知れません)

  

さて、もともと腸管上皮細胞に作用するタンパク質として

注目されたp75(=Msp1)に対して、Lebeer先生の研究グループは、

どのようなアプローチから研究したのでしょうか?

   

実は、このタンパク質のアミノ酸配列が、

「細菌の細胞壁を分解する酵素と似ている」という観点から、

「細胞壁分解酵素」として解明を試みたのです。

   

そもそもヤン先生は2007年の論文(※)で、

p75のアミノ酸配列が細胞壁に関連する加水分解酵素と似ていることを

報告していました。

ただ、ヤン先生はお医者さんですし、酵素としての機能には着目せず、

大腸炎の予防や治療に向けた医学的アプローチから研究を進めてきました。

※Yan et al. (2007) Gastroenterology 132:562-75.  

 

一方で、Lebeer先生と言えば、

古くからL, rhamnosus GGの研究を精力的に進められてきた方ですので、

本来の機能であろう「細胞壁分解酵素」という性質を

明確にしようとしたのだと思います。

   

またまた、話が長くなってしまったので、

本日はここまでにします。

 

   

つづく。

2020年8月29日 (土)

p75というタンパク質の研究①

こんにちは。

トヨエモンです。

 

さて、タイトルにしたp75というタンパク質・・・

実は米国Vanderbilt大学のFang Yan教授(ヤン先生)が

Lactobacillus rhamnosus GG(※1)から見つけたタンパク質の一つです。

もう一つのタンパク質p40と共に、2007年に報告されました(※2)。

※1 2020年4月に学名がLacticaseibacillus rhamnosus GGに変更されています。

※2 Yan et al. (2007) Gastroenterology 132:562-75.

  

上述の論文では、p40もp75もAktシグナル(細胞内の情報伝達機構の一つ)

を活性化して、腸管上皮の恒常性維持に寄与することが報告されています。

ただ、p40の方がその生理活性が高いという理由で、

ヤン先生はその後p40を中心に研究を進めていきます。

  

因みにp40とp75という名前は、

SDS-PAGE(電気泳動法)でこれらのタンパク質を解析(分離)すると、

分子量40と75だったということから、p(protein:タンパク質の略)を頭に付けて、

それぞれp40とp75になっています。

  

それで、p75の研究はというと、こちらのタンパク質については、

ベルギーのLebeer先生の研究グループを中心に報告されていきます。

また、その際に「p40とp75がL. rhamnosus GGから多量に分泌される

タンパク質」ということから、『Major secreted protein: MSP』と

呼び名が変えられています。

そのため、これらのタンパク質を扱った文献は、

両方の名前が使われていたりするので、少々ややこしいです。

  

また、その時に順番がMsp1=p75、Msp2=p40となりました。

トヨエモンはヤン先生とのお付き合いが長いせいか、

順番がp40 → p75(1 → 2)というイメージなので、

どうしてもこの順番に慣れません・・・。

ただ、「p」だけでは味気無いのも事実で、

「Msp」の方が少し格好良いかな・・・とも思っています。

  

さすがに長くなってしまったので、

このLebeer先生たちのp75/Msp1に関する論文は

次回紹介したいと思います。

 

 

つづく。

2020年8月25日 (火)

Lactobacillus属の乳酸菌が再分類されました・・・

こんにちは。

トヨエモンです。

  

実は今年の春(2020年4月)に

Lactobacillus属に属している乳酸菌の多くで、

その正式名称(学名)が変わりました。

  

Lactobacillus rhamnosusLacticaseibacillus rhamnosus

となりました・・・。

因みにLactobacillus gasseriのように変わらない菌種もあります。

  

詳しく知りたい方は、

腸内細菌学会のWebサイト(https://bifidus-fund.jp)に

用語集というコーナーがありまして、

そこに『Lactobacillus属の再分類』として掲載されている情報が

解かりやすいかもしれません。

 

大元の情報は、

Zheng et al. Int J Syst Evol Microbiol (2020) 70: 2782–2858.

となります。

 

学術的には非常に重要なことではありますが、

PubMed(文献データベース)で検索ワードを

「“lacticaseibacillus” “GG”」にしてみたところ・・・3件。

今までと同様に、検索ワード「“lactobacillus” “GG”」だと1,504件。

これではPubMedのヒット数ネタが書けません・・・。

どうしたら良いのでしょうか???

  

  

おしまい。

 

2020年7月27日 (月)

前回偉そうに書きましたが…

こんにちは。

トヨエモンです。

 

前回、腸管の細胞が産生するPRAP1というタンパク質をさらっと紹介しましたが、

その続編(?)です。

 

さて、このPRAP1、本名はProline rich acidic protein-1。

プロリン(アミノ酸の一種)が豊富で、酸性のタンパク質ということですね。

分子サイズは約17kDa、約150個のアミノ酸から出来ています。

  

そして面白いのが、

“天然変性タンパク質(intrinsically disordered protein)”であること。

 

  

偉そうに紹介していますが、 

トヨエモン、実は天然変性タンパク質のこと…

全く知りませんでした!(苦笑)

 

なので、最初、intrinsically disordered proteinを見たときに訳すことができず、

“もともと調子が悪いタンパク質”と訳し、「???」と行き詰まりました。

 

  

ちなみにWikipediaでは、

『固定された、もしくは整った(「オーダーした」)三次元構造を

持たないタンパク質である』と書かれています。

  

通常、タンパク質はアミノ酸配列や分子間の結合などによって、

三次元(3D)構造をとっています。

そして、タンパク質が機能するには3D構造が重要で、

例えば、卵の白身は過熱すると変性し(3D構造が壊れ)、

真っ白に固まり、もはや生卵の白身とは別物になってしまいます。

  

 

一方で、天然変性タンパク質は、決まった3D構造をとっていない、

もしくは部分的にしか3D構造をとっていないので、

ただのアミノ酸が並んだ鎖がフラフラしている感じなります。

それでも機能を持っているということみたいです。

 

 

なんだか、このフラフラしている感じが自由でいいですね!

トヨエモンも自由に生きたい!!

なんて考えていたら、

もはやPRAP1自体はどうでもよくなって、

天然変性タンパク質について、もっと知りたくなりました(笑)

知りたい欲求があるうちは、未だ研究者としていられるのかな…???

 

  

おしまい。

2020年7月22日 (水)

腸管の細胞が産生するPRAP1

こんにちは。

トヨエモンです。

 

そういえば、ついにGO TOキャンペーンが始まりましたね。

ちなみにTO GOだったら「テイクアウト」という意味ですね。

自粛期間中はどこもかしこもテイクアウトだったので、

いつの間にか、自主的に「TO GOキャンペーン」をやっていたのかも知れません(笑)

どうでもいい話ですみません・・・。

 

さて、今回はLactobacillus rhamnosus GGと腸管の細胞について、

さらっと書いてみたいと思います。

と言うのも、“腸管の細胞が産生するPRAP1というタンパク質が、

酸化ストレスなどから腸管上皮を保護している”というような内容の論文(※)を

見つけたからです。

 ※ Wolfarth et al. Cell Mol Gastroenterol Hepatol (2020)

 

どうやら、このPRAP1というタンパク質は、

マウスにL. rhamnosus GGを投与して、

その腸管上皮細胞の遺伝子発現を調べた際に見つかったものらしく、

ちょっと気になった次第です。

また、PRAP1以外の細胞保護因子の遺伝子発現も上がるようで、

腸内細菌やプロバイオティクスが腸管上皮細胞に作用することの重要性が伺えます。

   

ちなみに弊社が共同研究をしている米国Vanderbilt大学のFang Yan教授は、

L. rhamnosus GGが作るタンパク質p40とp75が腸管上皮細胞に作用して、

恒常性維持に関与していることを発見した先生です。

  

このように、色々なことが明らかになってくるにつれ、

プロバイオティクスは単一のメカニズムではなく、

様々な経路を通して、健康に寄与していることが分かります。

  

つづく。

2020年6月19日 (金)

乳児疝痛(コリック)

こんにちは。

トヨエモンです。

 

過去、このブログでは、世界最大級の医学文献データベース『PubMed』で

LGGの論文を検索したときのヒット数をチョイチョイ報告していました。

ちなみに今日(2020年6月19日)のヒット数は1,400件以上、

2020年だけでも既に64報が報告されています。

つまり、LGGに関連する研究は世界中で今も着々と進んでいるのです。

 

で、最近発表された論文をざっと確認していたら、

乳児疝痛(にゅうじせんつう、コリック)に関する論文がありました。

 

健康な赤ちゃんが原因不明で泣きぐずることを、

日本では『黄昏泣き』とか『夕暮れ泣き』と呼ぶそうです。

(トヨエモンは初めて知りましたw)

昔は何故泣いているのか解らず、生後数か月でおさまるので、

仕方がないと思われていたようですが、

海外では赤ちゃんの胃腸の痛みや不快感が原因の一つだと考えられていて、

infantile colic(コリック)と呼ばれ、早くから研究が進んでいたらしいです。

 

そして、胃腸の不調と言えば、やはりプロバイオティクス。

実は2015年にフィンランドのツルク大学の研究チーム

(このブログでも名前が出てくるSeppo Salminen先生や

Erika Isolauri先生のチーム)が、

LGGと乳児疝痛の研究について報告しています(※1)。

 

ただ、この報告では、

LGG投与群とプラセボ群(LGG無し)を比較したときに、

赤ちゃんの泣きぐずりの時間に変化はみられませんでした。

しかし、その親御さんたちにとっては、

LGG群の方が“有意に泣きぐずりが少ない”と感じていたことが分かり、

LGGの効果が期待されました。

 

そして、今回のイタリアのチームが発表した論文(※2)では、

LGG投与群で泣きぐずりの時間が有意に短くなったことが報告されました。

 

今後、このようなエビデンスが蓄積されていけば、

LGGの乳児疝痛に対する効果が確固たるものになっていくのでしょう。

そして、赤ちゃんとその御両親が少しでもハッピーになれるのであれば、

LGGの研究をしている拙者らも嬉しい限りです。

さらなる研究の進展が楽しみですね。

  

おしまい。

 

 

※1 Partty et al. Pediatr Res (2015) 78:470-5.

※2 Savino et al. Nutrients (2020) 12:E1693.

2020年4月18日 (土)

なんで気付かなかったのか・・・

こんにちは。

トヨエモンです。

 

先日地方の新型コロナ感染について書いたと思ったら

やはり全国に緊急事態宣言が出ましたね。

 

3月の連休から2週間後に感染者数が一気に跳ね上がったので、

そのデータをもとに、今回の宣言を出したとのことです。

確かに厚生労働省のHPを見ると、3月の連休あとから急に増えだして、

4月7日辺りから、ワーっとなっています。

そりゃ、GWに外出しないで、ってなりますね。

 

さて、トヨエモンは大切なことを忘れていました。

そう、LGGと肺炎の論文を検索していないんです・・・。

こんなにブログのネタとして最適なはずなのに。

ホント、アホなんじゃないかと自分で思ってきましたsweat02

 

で、早速PubMedで

“lactobacillus” “GG” “pneumonia”をキーワードに検索してみます。

 

すると、10件ヒット!

01_2

 

その中で、LGG以外のプロバイオティクスを一緒に使っているものを除くと、

下の表のように8件になりました。

 02  

 

当然、コロナに対する研究なんて無いのは分かっていたけど、

人工呼吸器関連肺炎(VAP)とかに対する研究があるんだと思うと、

改めてLGG乳酸菌の懐の深さに気付かされましたhappy02

 

因みに1の論文に関連してですが、

LGG乳酸菌と呼吸器感染の研究については

「おしえて!LGG乳酸菌」(旧LGGラボ)にも掲載されています。

リンク先:https://lgglab.jp/index.html

ご参考までに。

 

おしまい。