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2021年7月

2021年7月31日 (土)

ポストバイオティクスとは?②

こんにちは。

LGG菌サムライです。

 

さて、前回はプロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクスの

定義を確認したところで力尽きてしまいました。

今回は本題に入りたいと思います。

  

まず、ISAPPの共同声明によるポストバイオティクスの定義は、

宿主に健康上の利益を与える無生物の微生物および/またはその成分の製剤」となります。

  

postは「後」、bioticは「生物の、生命の」を意味するので、postbioticで「生命の後」と

いうことで非生物となります。つまり死んでいます。

そして、声明ではこの定義を提案するうえで、「inanimate(無生物)」というワードを

使用したと述べています。

「無生物」は、生きて存在していた微生物が死滅したという事実を単純に捉え、機能の喪失を

意味するものではない、というニュアンスだそうです。

この辺りの英語の意味を理解するのは難しいですね。

  

また、ポストバイオティクスは微生物細胞もしくは微生物細胞の成分でなければならない

ということです。

弊社でも以前、Lactobacillus gasseri TMC0356というガセリ菌についても

精力的に研究を行っていたことがあります。

この際は、培養したTMC0356株の菌体を集め、熱で殺菌した「加熱死菌体」の効果を

研究しておりました。

実際、TMC0356の加熱死菌体は、インフルエンザ感染(※1)や

メタボリックシンドローム(※2)に対する宿主への効果が認められていることから、

これはポストバイオティクスの定義に当てはまるかと思います。

※1 Kawaseら(2012)FEMS Immunol Med Microbiol

※2 Shiら(2012)British Journal of Nutrition

  

 

一方で、精製された微生物の代謝産物はポストバイオティクスに該当しないとされています。

例えば、L. rhamnosus GGはp40やp75といった機能性タンパク質を産生しますが、

“これらを精製”してもポストバイオティクスにはならないようです。

  

また、ポストバイオティクスは、プロバイオティクスに由来したものでなくても

認められることも大きな特徴です。

当然、安全性が担保されていなくてはいけませんが、生菌では使用できない or

生菌で保持することが難しい菌なども無生物化すれば使用できる可能性があるので、

健康増進に使用できる微生物ツールの幅が広がることが期待されます。

 

 

つづく。

2021年7月26日 (月)

ポストバイオティクスとは?①

こんにちは。

LGG菌サムライです。

 

さて、ポストバイオティクス(postbiotics)という言葉をご存じでしょうか?

この言葉は、10年ほど前から主に「死菌体」と呼ばれるものに使用されてきたそうです。

しかし、その定義が曖昧なことから、今年(2021年)の5月に

ISAPP(International Scientific Association of Probiotics and Prebiotics)が

「postbiotics」の定義と範囲に関する共同声明を発表しました。

その文献が下記となります。

※Salminenら(2021)Nature Reviews Gastroenterology & Hepatology

『The International Scientific Association of Probiotics and Prebiotics (ISAPP)

consensus statement on the definition and scope of postbiotics』

  

このブログでは、過去に「プロバイオティクスとは?」というテーマで

いくつか記事を書いているかと思いますが、今回は上述した論文をもとに

「ポストバイオティクス」について書いてみたいと思います。

  

まず、似たような言葉に「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」

「シンバイオティクス」があります。

これらもISAPPが定義付けしていますので、復習も兼ねて、それぞれご紹介します。

  

<プロバイオティクス>

定義:「適切な量を投与することで、宿主に健康上の利益をもたらす生きた微生物」

L. rhamnosus GGは、まさに生きた微生物で、宿主の健康に有益な効果

(例えば整腸作用やアトピー予防など)を示すことからプロバイオティクスですね。

  

<プレバイオティクス>

定義:「宿主の微生物が選択的に利用することで、健康上の利益をもたらす基質」

例えば、オリゴ糖や一部の食物繊維(イヌリンなど)などは代表的なプレバイオティクスです。

これらは、ビフィズス菌のような宿主由来の善玉菌を増やすことで、宿主の健康に寄与します。

  

<シンバイオティクス>

定義:「生きた微生物と宿主微生物が選択的に利用する基質からなる混合物で、宿主に健康上の

利益を与えるもの」

元々、シンバイオティクスは「プロバイオティクスとプレバイオティクスの組み合わせ」と

考えられていました。つまり、“ただ混ぜただけ”ということになります。

この場合、投与されたプロバイオティクスは自身の効果を発揮し、プレバイオティクスは

“宿主由来の優良な自生の微生物”に利用されることで効果を発揮するという、別々の機能を

補完するだけでした。

しかし、ISAPPの定義によって、宿主由来の自生の微生物以外に、“プロバイオティクスの

ように外部から適用された微生物も、シンバイオティクスに含まれる基質のターゲットとなり得る”、

となりました。

これによって、相乗的な意味が含まれるようになりました。

  

そして、この3つの定義に加え、今回の声明にて『ポストバイオティクス』という

新たな定義が加わることになりました。

  

少し疲れましたね。

 

  

つづく。