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2020年9月

2020年9月30日 (水)

p75というタンパク質の研究③

こんにちは。

トヨエモンです。

 

さて、前回はp75(=Msp1)が細胞壁分解酵素であろうという観点から、

Lebeer先生のグループが研究を実施したということを書きました。

因みにこの研究報告の第一著者はClaesさんという方なので、

以下「Claesら」と書きます(※)。

また、p75についても、彼らの報告した通りにMsp1と記述することにします。

それでは、実際にどのような研究をしたのでしょうか?

※Claes et al. PLoS One. (2012) 7:e31588.

 

まず、Claesらは、正常なMsp1を産生することができない

L. rhamnosus GG株を作りました。これをノックアウト株と言います。

通常のL. rhamnosus GGを培養して顕微鏡で見ると、

1.5~2μm程度の大きさの菌が、

数個から数十個がつながっていることが観察できます。

論文の写真を引用できないので、トヨエモンが撮影した写真を載せます。

何となく鎖のように繋がっていることが分るでしょうか?

 

01

ただ、1個1個の菌の形が棒状というか、

円筒状であることははっきり分かるかと思います。

 

 

一方で、ノックアウト株を培養すると、

1個1個の菌の形状がはっきりせず、

なんと普通の5~10倍の長さをもつL. rhamnosus GGになってしまうというのです。

こちらも画像が引用できないので、イラストで説明します。

(本当は写真で見ていただきたいのですが・・・)

 

02 

 

細菌は分裂して増えていくわけですが、

ノックアウト株はうまく分裂できていないために、

このような現象になると考えられます。

そして、分裂する際に重要なのが細胞壁分解酵素とよばれる、

自身の形を作っている細胞壁(殻のようなもの)を壊す酵素なのですが、

ノックアウト株はMsp1が働かないために細胞壁がうまく壊れず、

このように長く伸びてしまっていると考えられるのです。

  

Claesらは、この論文で実際にMsp1が

L. rhamnosus GGの細胞壁を分解することも解明しており、

Msp1の本来の役割は「細胞壁分解酵素」であることを明らかにしています。

  

もともとは腸管上皮に作用するタンパク質として発見されたp75ですが、

本来の役割は自分自身の細胞壁を分解する酵素だったのですね。

実は、本来の役割のほかにも機能するタンパク質は、

ムーンライティングタンパク質と呼ばれ、

乳酸菌にも様々なムーンライティングタンパク質が発見されています。

  

だいぶ長くなってしまったので、

そのうちムーンライティングタンパク質についても書きたいと思います。

 

 

おしまい。

2020年9月28日 (月)

p75というタンパク質の研究②

こんにちは。

トヨエモンです。

 

最近、めっきり涼しくなりました。

もうすぐ9月も終わりです。

そして、前回の更新からもう1ヵ月も経ってしまいました・・・。

  

ということで、

今回もL. rhamnosus GGが作り出すp75というタンパク質についてです。

(※前回を読んでいない方はさっぱり解らないかも知れません)

  

さて、もともと腸管上皮細胞に作用するタンパク質として

注目されたp75(=Msp1)に対して、Lebeer先生の研究グループは、

どのようなアプローチから研究したのでしょうか?

   

実は、このタンパク質のアミノ酸配列が、

「細菌の細胞壁を分解する酵素と似ている」という観点から、

「細胞壁分解酵素」として解明を試みたのです。

   

そもそもヤン先生は2007年の論文(※)で、

p75のアミノ酸配列が細胞壁に関連する加水分解酵素と似ていることを

報告していました。

ただ、ヤン先生はお医者さんですし、酵素としての機能には着目せず、

大腸炎の予防や治療に向けた医学的アプローチから研究を進めてきました。

※Yan et al. (2007) Gastroenterology 132:562-75.  

 

一方で、Lebeer先生と言えば、

古くからL, rhamnosus GGの研究を精力的に進められてきた方ですので、

本来の機能であろう「細胞壁分解酵素」という性質を

明確にしようとしたのだと思います。

   

またまた、話が長くなってしまったので、

本日はここまでにします。

 

   

つづく。